2011年12月25日日曜日

平成23年12月24日(土) はれ

クリスマスが特別な日であるのはキリスト教信者とその文化圏の人々だと思うのだが、日本では宗教的には何の関わりもない人々が本来立ち入れぬ聖なる儀式生誕祭を、いささかの恥じらいもなくイベントにして既に幾星霜、うっかりすると仏壇にクリスマスプレゼントが置かれたりする。

私はこの宗教的節操のなさは、非難することよりもむしろ日本人のしなやかな文化吸収力だと思う。
私を含めて多くの日本人は信心はあるが宗教はない。つまり(Believe)と(Religion)の違いだ。

困ったときの神頼みは当たり前、自分がこれと思えば便所の神様でも、鰯の頭でもありがたく思えるという柔軟な精神構造は多分苦境の時のしたたかなバネとなって古くから今の日本を形作ってきたものと思う。

クリスマスといえば以前仕事をしていた「ポワロー」というフレンチレストランのエピソードをひとつ。

その店は1985年から1995年くらいの間、表参道・青山界隈はもちろん同業者で知らぬ者はなし、かつひんぱんに雑誌に紹介され当時最も予約がとれない店のひとつだった。

毎年10月あたまでクリスマス前後の予約が昼夜とも2回転分満席になる。30席の小さな店なので満席になった時点からかかってくる予約の電話はすべて、おことわりすることになる。朝、店に出勤したときから一日中電話が鳴りっぱなしで仕事にならない、知り合いに電話番を頼んだほどだ。

単純計算すると10月10日から12月20日までのおよそ約70日、一日中本当に鳴りっぱなしの電話の件数を一時間当たり少なく見て30件として12時間では300件以上、これが70日、ということは21000件の予約があったということだ。

ほとんどお二人様予約なので四万人以上の予約を断ったことになる。もしこれをすべて受けていたら表参道駅から青山通りは大変なことになる数字だ。この他にも普通の予約電話は入りっぱなしだった。私はこの過去の繁盛店の自慢をしているのでない。

そのような予約状況にもかかわらず、当日連絡なしで来店していただけぬ場合がある。予約時間を30分以上過ぎて何の連絡もいただけない事がある。その時点で店側の判断としてその予約客はリストからはずす事になる。そこに、たまたまフリの二人連れの方が「二人なんだけど」とドアを開けて来たとき「いらっしゃいませ」と迎えるスタッフの複雑な気持ちをお解りいただけるだろうか。

その日まで断り続けた予約電話の数、キャンセル待ちで待機していただいた多くの方をおいて、そのお二人様は自分たちがいかにラッキーだったことを知らない。もちろん誰もそれをその方に言うことはない。

それもこれも含めて様々なことがおこり世の中は移ろうのだ。表に出てきている事はほんのわずか、多くは人の胸にしまわれている。



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