神田の『藪』蕎麦が火事になった。私は蕎麦通ではないどころか、蕎麦音痴なのでよほど酷いのを出されないかぎり満足する。なので蕎麦店巡りなどは思うべくもなく、この『藪』も行ったことはない。ただ知識としては、藪、砂場、更科系の店がありそれぞれ暖簾分けをして各地にその系統があるみたいだ、くらいは識っている。
蕎麦音痴と、堂々と言えたものではないが蕎麦は好きである。というか、東京の酒を飲ませる蕎麦屋の空気が好きなのである。小上がりのある蕎麦屋や、二階のある蕎麦屋の二階の座敷で長丁場で飲むのが良いのだ。鮨屋だとこうはいかない。カウンター越しにずっと職人さんがこちらの手許を視ていて落ち着いて飲むことはできない場合が多い。
昔は鮨屋で酒を注文すると「飲むんなら蕎麦屋へ行ってくんねえ」という決まり文句があったそうだから、蕎麦屋で飲むのは正統である。
蕎麦屋の隠語で二階の座敷に上がった男女の連れを「おしどり」といって、店の者が二階に行くときは咳払いのひとつもしてから上がったような時代があったそうだ。
そういえば、中野の南口の『更科』は亡くなったJ尾とよく行った。二階の小上がりで延々と飲み続け〆の蕎麦を食べずじまいで帰ることが多かった。そんな利用の仕方が許されるのが蕎麦屋の魅力である。
中野南口『更科』二階小上がり |
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