若い頃この人の随筆が好きで読み漁った。随筆集『若き日の山』・『荒野の竪琴』・『漂白』ほか『博物誌Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ』はずっと手許にあったが、引っ越しの時に処分したのか、今は四散してしまった。
串田氏の没後10年、生誕100年だそうだ。串田氏は2005年に亡くなり、その翌年、私は日暮里の谷中霊園に一ファンとして墓参させていただいたことがある。
2006年谷中霊園 |
〝何故、好んで雪と氷の岩尾根や岸壁を攀じるのだろうか。一歩一歩の疲労が、ただ白いあやしい夢を産んで行くような、そんな雪の深い斜面を押し進み、やっとのことで辿りついた凍る岩壁に、根気よく、いよいよ力を入れて足場を切る。そして時にはもうこの力のかたまりをいさぎよく投げ棄てることで、自分の力はすっかり尽きるような思いさえして、夢中で這い上がったその岩壁の頂は、とうてい息も付けない程の横なぐりの風と雪だ。
若い日の、数々のこうした登高には、幾分勇壮なたたかいの気分がなくもなく、その末には、征服の熱い歓喜もこみあげて来た。今ここに立つことの出来た自分を、誇らしく飾るために、頬に突きささるような強風がうれしかった。(『若き日の山』1955)〟
串田節満開である(笑)。笑ってはいけないが、文学者、哲学者、詩人、編集者、登山家と様々な肩書きの付く方で、若い頃はこの人の文章に酔いましたね。
昼は炭水化物抜き |
35℃を超える猛暑日が連続4日目で明日も続くと新記録だそうだ。続いてほしいとは全く思わない。
自販機でゼリーのカルピスを見つけた。
私は子供の頃から「カルピス」が好きだ。私の子供時代は今ほど清涼飲料の種類があった
わけではなく、瓶の「バヤリース」・「ラムネ」など、数えても数種類であった。
そういう時代に「コカコーラ」という黒い液体が小学校に、無料で全員に配給されたことがある。初めて飲んだ時の衝撃は忘れない。ハチャトゥリアンの「剣の舞」を初めて聴いた時の衝撃と同質だったが「美味しい」と言った子はいなかったように憶えている。1964年東京オリンピックの年で私は小学6年生であった。
そういった時代背景のなかで「カルピス」のおいしさは別格であり、私の中のおいしさラ
ンクでは武田の「プラッシー」の猛追をしりぞけ一等星のごとく燦然と輝く存在だった。
このカルピスの歴史は意外に長い。大正8年の7月7日に初めて発売されたという事であ
る。包装紙には七夕にちなんで天の川をイメージした水玉模様が描かれている。夢がある。
「カルピスは初恋の味」というキャッチコピーがあるが、与謝野晶子の作だと誰かに吹き込まれ、長い間そう思いこんでいたが、調べてみるとこのコピーは大正10年、詩人の驪城(こまき)卓爾によって作られていた。与謝野晶子の歌に
カルピスを友は作りぬ蓬釆の
薬といふもこれに如(し)かじな
カルピスは奇(く)しき力を人に置く
新しき世の健康のため
などがあるため混同されたのであろう。
「カルピスゼリー」、暑い日には天国の味がする。
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